コラム「こころの風景」

「こころの風景」は、日常生活や対人関係の中で起こる様々な出来事について、感じたり気づいたりしたことを心理的側面からとらえ、スタッフが交替で執筆します。ぜひご一読ください。
令和3年度から『広報アジア』における本コラムの掲載は年2回になりました。

令和5年度

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令和6年1月15日 第931号

HSPを知っていますか?

カウンセラー 小田切 玲

HSPとは

相談を受ける中で、学生から「HSPかもしれない」と聞くことがよくあります。HSPとはHighly Sensitive Personといい、「とても敏感な人」のことを指します。これは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した性格的な特性です。近年では「『繊細さん』の本」が話題になりました。
 
HSP傾向の人は、身体的にも精神的にも感じる力が強いため、刺激に敏感です。その場の雰囲気や他者の状況や感情を察知し、人が見過ごしてしまうような小さな変化をいくつもつなぎ合わせ、対応方法を頭の中でぐるぐると考え続け、疲弊してしまいます。

先ずは自分を受け容れる

そのような特性は、幼少の頃から家族や周りに「気にしすぎだ」と言われてきたことによって、生まれもった自分の欠点や短所だと思い込みがちです。相談に来る学生にも同様の傾向が見られます。
 
自分の特性をポジティブに受け止めてみるのはどうでしょう。「自分は敏感な特性がある」それは怖さや疲れやすいことにつながるけれど、日々の生活の中でちょっとした光景に感動したり、何気ない人の優しさに気づき、幸せを感じることにも活かされています。
 
神経を人一倍使うため、疲れた時はひとりでゆっくり心を休める時間が必要です。刺激の少ない環境や、安心できる自分の居場所は「安全基地」になります。ある学生は布団を頭まで被って丸くなって眠ると話していました。

HSPを理解する

HSPの人は、人が好きですが神経を張り巡らせているため、大勢の人との付き合いは苦手な傾向があります。
 
また、相手の感情の機微を察することに長けていても、その感情が起こった理由まで正確に当てることはできず、自分のせいだと悩むこともあります。
 
なにより、HSPは病気や障害ではありません。あくまでも特性のひとつです。
 
家族は「敏感さ」ゆえの辛さを労り、繊細な感覚のメリットを共有してください。それが何よりも本人の力になるはずです。

※HSPを詳しく知りたい方はこちらへ
『学外サイト:The Highly Sensitive Person(日本語版)

参考文献
武田友紀「『繊細さん』の本」飛鳥新社2018年
エレイン・N・アーロン「ささいなことにもすぐに『動揺』してしまうあなたへ。」講談社2000年
「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術」パンローリング株式会社2020年
令和5年9月25日 第929号

多様性の尊重のススメ

カウンセラー 小市 玲子

個別性

日々、多くの学生とお会いしていますが、ひとりひとり悩みも違えば、個々に抱えるテーマも違います。私が大切にしていることのひとつに、個別性の尊重があります。似たような状況や問題があっても同じように捉えるのではなく、その学生のことを理解しようと努めています。

多様性

その中で、自分とは違う特徴がある人への違和感や受け容れがたい気持ちをお聞きすることがあります。年齢、国籍や民族、宗教、障がい等のこともあれば、考えや意識・感覚についてのこともあります。それぞれがその人らしさなのですが、自分とは違うものを受け容れるのは時に難しいことがあるようです。

LGBTQ+とSOGIE

性に関することも多様性のひとつです。最近よく使われるSOGIEは「性的指向」「性自認」「性表現」の略で、特定の人を示すLGBTQ+とは違い、すべての人を対象とした性の在り方を表現する言葉です。つまり皆が同じフィールドに立って、性の多様性を表現できます。
 
このように、違いを見るのではなく、スペクトラム(連続体・分布範囲)として考えると多様性が身近になるかもしれません。

自身を見つめてみる

また、他者への違和感や受け容れがたい気持ちには、その存在に自分が脅かされる感覚や、自分の何かしらの感情が刺激されることによるものがあります。
 
例えば受け容れがたい気持ちの場合、実はその人に対する劣等感や偏見、好意等、自分が認めたくない気持ちが意識されずに隠れていることがあります。それに気づくと、否定的な気持ちや行動に変化が生まれ、相手への理解や関係改善につながっていきます。

多様性の尊重と対話

このように相違を多様性として受け容れ、立場や生き方、感じ方、考え方について理解を深め合えば、様々な状況がより良い方向へ向かうと思うのです。
 
日々の生活で何かあった時、自身に問うとともに、お互いに「多様性を尊重」し「同じフィールド」にいる意識で「対話」をしてみるのはいかがでしょうか。

令和4年度

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令和5年1月15日 第925号

共感のススメ

カウンセラー 小市 玲子

対面で会うこと

対面授業となってから、学生の皆さんとのカウンセリングは、九割ほどが実際にお会いする方法となりました。オンラインの便利さはあるものの、実際に会うことで感じられることの多さや、他部署や教職員を紹介する時のスムーズさを感じています。

学生の話と「共感」

皆さんからは本当に色々なお話をうかがいますが、日々の苦しさや孤独感を語ってくれることもあれば、楽しかったことや最近はまっていることを話してくれることもあります。そのひとつひとつにその学生らしさが感じられ、抱えるテーマと重なることもあって、その意味を考えてみたりしています。

ドラマや小説、コミック等の話で、「すごくこの主人公に共感できて」とか、「〇〇さんのツイートにとても共感した」等、共感という言葉は学生にとって日常的なもののようです。しかし逆に、友だちや親に「共感された」「わかってもらえた」と話すのを聴くことが、あまりないような気がします。

関係の中での「共感」

日々、共感をベースにお会いしていますが、学生の日常に「共感される機会が少ないのではないか」と感じています。自分のために何かに共感することはあっても、お互いに目の前にいる相手の気持ちを感じとり、共感することが意外と少ないのかもしれません。

「共感の力」

共感することで、自身を振り返ったり孤独感が癒されることもあれば、共感されることで気持ちが軽くなったり、自分の中に何か動き出せるような力が湧いてきたりすることは皆さん経験されているかもしれません。共感し共感されることにより織り成される場に生まれる「力」があるのだと思います。それはひとりでは成り立ちません。

日々の親子関係や友人関係で、なんとなく上手くいかない時、少し「共感」を意識してみるのはいかがでしょうか?相手の気持ちを感じてみることで何かしらこれまでと変わるところがあったら、とても嬉しく思います。
令和4年9月15日 第923号

最適な心理的距離を見つけるために

カウンセラー 小田切 玲

最適な心理的距離とは

大学生の年代はそれまでの経験をもとに、感じ方や考え方、価値観を確立しながら、人との交流を積み重ねるなかで自分の生き方を模索する、大切な時期です。そのための一歩として、自立がとても重要になってきます。

自立は親からの精神的な独立と大きな関係があります。親の考え方と自分の考え方の間で葛藤したり、親に反抗したりしながら、最適な心理的距離を見つけていく過程を辿ります。

最適な心理的距離とは、それぞれ個人・ご家庭によって違います。子どもが「最適」を見つけるために、近づいたり、離れたり、反抗したり、甘えたりすることを何度も繰り返し、試す必要があります。また、今までの距離や関係性が変わることで、不安が生じます。その不安を乗り越えるための過程で友人や恋人との関係がより重要なものへと変化し、家族以外の世界を確立していくのです。

実は学生からの相談で、親子関係の内容は少なくありません。親が子どもとの関係に悩むように、子どもも親に自分を理解してもらいたいと悩み、葛藤しているのです。

子どもの主張にも耳を傾ける

反抗し、言うことを聞かなくなった子どもに、親はどのように対処したらよいのでしょうか。

常識的に考えても、本人にとって一番良いはずのことを勧めているにも関わらず、聞く耳を持ってもらえない。そうなると、時にはお互いの言い合いが加速して、怒鳴り合いになることがあるかしれません。まさに親子の「対決」です。しかし、この「対決」の場で親は自分の主張をするだけでなく、子どもの主張を聴くことが必要になります。そのうえで、自分の価値観は狭くないか、子どもが主張していることの背景は何か、合意できる部分はあるか、その場合、譲歩できる到達点はどこかなど、自分の内面的なものとの「対決」も含まれているのです。しかし、感情的な場面で考えることはとても難しいことです。

建設的な話し合いを

必要な場面以外で感情的に怒らないために、怒りを感じたら6秒間、意識的に言動をストップさせてみる、「アンガーマネージメント」という方法があります。

怒りの感情はその瞬間から6秒間がピークで、それ以後は沈静化していくようです。それと同時に、怒りの程度や理由を考え、客観視することで冷静さを取り戻せるといいます。このように対応できると、建設的に話を進めることができるようになるかもしれません。

まずは子どもの言い分をしっかりと聴き、どのような言葉をかけるのか、ご自身で考えるゆとりが持てると最適な心理的距離が見つけやすくなるのではないでしょうか。

令和3年度

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令和3年11月15日918号

beingを大事にしていますか

カウンセラー 小田切 玲  

努力に終わりはある?

今の世の中、どう目標に向かい、それを効率よく達成させていくかを求められる場面がとても多いと思います。受験勉強を経て大学進学した後も授業での課題や発表、就職活動があり、社会人として働きだしてからも、「タスクに対してどのような結果が出せるか」が何よりも重要になっています。
 
次から次へと与えられる課題を真面目にこなす努力を続けていると、どう休んだら良いかわからず、他人からの評価が気になったり、ストレスや疲労が溜まって未来に絶望してしまう人もいます。
 
カウンセリングセンターでも学生からそのような相談を受けることがあります。そんなときのヒントになる考え方を新聞の悩み相談欄からご紹介します。

beingとdoing

英語で「人間」のことを「human being」と言いますが、ドイツの社会心理学・精神分析学・哲学者のエーリッヒ・フロムは、存在する「be」から行為の「do」が重視され、今の私たちは「human doing」になっているのだ、と主張しました。beingとは、今ここにある感情や欲求、生理的反応など、あるがままの自分、つまり「今ここに存在している」ことがベースになっています。一方でdoingは能力や資格、肩書や実績など、行為によって獲得し積み上げたものの総体として人間を捉えています。
 
学校や社会では期待や役割により、doingを求められないことはありません。やるべきことだけ優先し、「将来」ばかりを見ている日常では「今」を蔑ろにしていることに気づけなくなっている場合があります。大人・子どもにかかわらず、自分を見失って「今」の感情や生理的反応を抑圧してしまう人は少なくありません。
 
しかし、人間は産まれたときから生きているだけで価値があるのです。「ありのままの存在= being」を肯定することで、他者による評価を気にして、努力し続けなければならないという思いこみから解放されるのだと思います。

バランスを取る

beingとdoingは両輪とも言えます。「どんな状態であっても自分は自分で良いのだ」と実感できて初めて、人は能動的に自己を肯定する力を得ることができるのです。2つのバランスを取ることで、自分らしさを保ちつつ、目標に向かうためのエネルギーを維持することができるのでしょう。
 
子どもに声をかけるとき、「もっと努力しなさい」「頑張りなさい」というメッセージばかり発していませんか?家族だからこそ、お子様がbeingでいられる時間を大切にしてあげてください。
 
<参考>
清田隆之「悩みのるつぼ」『朝日新聞』2021.4.10版
令和3年7月15日916号

家族関係、再考の時

カウンセラー 小市 玲子

コロナ禍での家族

この1年半、新型コロナウイルス感染症対策で不要不急の外出制限が続き、家族で過ごす時間が増えたことは、大きな生活変化だったかもしれません。家族で話す時間や団欒が増えた家庭もあれば、逆にストレスとなって衝突が増えてしまった家庭もあったかもしれません。
 
昨年度はご家族からの電話相談も少なくありませんでした。近くにいるのに、意外と大切なことを話すことが難しいのが最近の親子関係なのでしょうか。勉強も就活もせず、何もしていないでいるように見えると、親としてはとても心配になりますし、焦ってついつい怒ったりしても状況変わらず、溜息ばかり……。また、離れて暮らすお子さんと連絡がとれず、大丈夫と思っていたらあまり単位がとれていないといった成績通知に驚く……等、状況は様々かと思います。

家族関係を考える

しかし、もしかしたらお子さんも何か困っているのかもしれません。自分でもどうしたらよいのかわからず、部屋にひきこもり、睡眠やゲームで気持ちを紛らわせていることも考えられます。家族は心理的距離が近く冷静になるのが難しい関係ではありますが、そこで落ちついて、本人なりの事情や気持ちをゆっくり聴いてあげることが、大切な一歩かもしれません。お子さんは、誰にも理解されない孤独の中で見た目以上に苦しんでいることがあります。そのような時、一番の味方となれるのは家族です。訊いてもすぐには話してくれないかもしれませんが、寄り添って理解しようとする姿勢は伝わります。
 
またご家族で考えていくことに加えて、ご本人にカウンセリングセンターで話してみては?と勧めてくださるのも一案かと思います。

カウンセリングセンター

コロナ禍の状況が続き、先の見えない不安やうつ状態、なんとなくの体調不良を示す学生もいます。
 
カウンセリングセンターでは、話すことで学生の皆さんの気持ちを整理し、元気を取り戻したり、生きづらさを軽くしたりするお手伝いをしています。また、保護者の方から学生に関するご相談もお受けしておりますので、ぜひご利用ください。

令和2年度

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令和2年12月10日912号

「半沢直樹」から感じたこと

カウンセラー 谷川 寛樹

テレビドラマ「半沢直樹」が大きな話題となり反響を呼んでいました。私も第1話から毎週欠かさず視聴していて、すっかりはまってしまったひとりです。前作でも「倍返し」などの流行語を生みましたが、今回も多くの名言がありました。その中で私が特に印象に残ったことばを紹介します。
 
◎誇りを持つこと
証券会社に出向した半沢直樹が銀行に戻ることになり、送別会が行われる場面があります。そこで半沢直樹が部下や仲間たちの前でスピーチをします。「どんな会社にいても、どんな仕事をしていても、自分の仕事にプライドを持って日々奮闘し、達成感を得ている人のことを本当の勝ち組というんじゃないかと俺は思う」といった内容で、それを聞いて思わず感銘を受けたことを覚えています。
 
そのことばに込められている内容は社会人だけでなく、大学生にも当てはまるのではないかと思います。勉強やスポーツに限らず、アルバイトや趣味、普段何げなく行っていることにちょっと目を向けてみてください。毎日継続して行っていること、とことんこだわっていること、以前できなかったことができるようになったこと、誰かのためあるいは自分のために行っていることなどあると思います。そこから自分がやってきたことを肯定的に受け止めていくことで、プライドが持てるようになるかもしれません。
 
たとえささいなことであっても、当たり前のことであっても構いません。他人から評価が得られず、人に自慢できるものでなくても、プライドを持って取り組むことで自信が芽生えてくるはずです。それがその人の個性となり、長所になり得ると思います。
 
◎他者を認めること
「半沢直樹」でもうひとつ印象に残っていることは、かつて敵やライバルだった人が味方になることです。しかも味方になる人がとても心強い存在になり、半沢直樹がピンチのとき助けてくれるのです。表向きは敵視していても、実はお互いにどこかで認め合っていたからこそ、いざというとき味方になってくれたのだと思います。
 
皆さんにも、ライバル視してきた人やお互いによくけんかをした人、一緒にいるとイライラしてくる人がいたのではないでしょうか?嫌いと思っている人や苦手に感じる人に対しては、気に入らないところや短所が目に入りやすく、あら捜しをしてしまいがちだと思いますし、それは仕方がないことだと思います。そこで敢えて相手の良い所や共感できそうなところを探してみてはどうでしょうか?そうすれば相手に対する印象も少しは変わってくると思います。
 
現在はコロナ禍で大学に通う日がかなり少なくなっている状況です。友達を作るどころか、会うことすら難しいと思います。だからこそこれまで自分が関わってきた人のことをもう一度振り返ってみませんか?その人の良さを見つけていくと印象も少しは変わり、実際に会うことがあった場合、これまでと違った感覚になっているかもしれません。
誇りと他者を認めることを、どこか片隅でもいいですから意識にとどめておくと、きっと自分にとって大きな支えになることでしょう。
令和2年10月10日908号

現状からの変化に大切なこと

カウンセラー 小市 玲子

◎奪われた「日常」
毎年夏になると、テレビで第二次世界大戦の終戦に関する報道がありますが、親や祖父母世代から話を聞いた影響もあるのか、当時の広島や長崎、満州、欧州の状況に思いを巡らし、平和であることをありがたいなと感じています。
 
しかし今年は新型コロナウイルスの影響から、私たちは当たり前と思っていた日常を奪われ、心身の健康を脅かされることとなりました。また、これまでのように気軽に友だちと集まったり、大学で授業を受けたり、留学、サークル活動、バイトといった学生生活を送ることができなくなってしまいました。
 
ようやくウィズ・コロナの生活にも慣れつつありますが、オンラインでほとんどのことが済んで便利な反面、人と関わることが減りました。また感染への不安から、これまでのように外出や外食を楽しむことができず、中途半端な気分で鬱々と過ごしている人もいるかもしれません。
 
◎ホロコーストについて
当たり前の日常が、あまりにも残酷な形で一方的に奪われてしまった人たちがいます。第二次世界大戦時のユダヤの方々です。公園や飲食店を使うといった市民としての権利を奪われただけでなく、職や教育を奪われ、家や財産を没収され、強制収容所に送られました。そこでは日常的に死や暴力があり、人間の尊厳も認められない扱いを受け、多くの人が亡くなっていきました。
 
昨夏、ポーランドを車で旅した時に、アウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所(V・E・フランクル「夜と霧」参照)とワルシャワ・ゲットー跡(映画「戦場のピアニスト」の舞台)を訪れてきました。そこで公式ガイドの方からお話をうかがい、奇跡的にも生き延びた方の記録を見て感じたことは、このような過酷な状況を生き延びるには体の強さや機転、運やユーモア等が必要でしたが、最も大切だったのは、どんなことがあっても生き延びるという「強い意志」そして「大切な人の存在や人とのつながり」だったということでした。
 
孤独になり生きる気力を失った人は、あっという間に目の光が消え命の灯も消えていったといいます。
 
◎人とのつながり
状況は比較できませんが、ホロコーストのさまざまな側面から得られることは多いと感じています。
学生の皆さんの中にも、人から切り離され不安や孤独を感じている人がいるかもしれません。また、外出することを止められ家族のしがらみに苦しさを覚えたり、オンライン授業で、いつもより多い課題の負担に押しつぶされそうになっているかもしれません。
 
先の見えないこの状況の中で、どのように過ごし、どのように乗り切っていけばよいのか、考えてみてもすぐには何も思い浮かばないかもしれません。しかし今すぐ動けなくても、今の状態をどうにかしたいという気持ちが少しでもあれば、そして人とつながってみようという思いがあれば、状況は必ず、少しずつ動いていきます。
 
◎ひとりで抱え込まずに
ひとりで考えていると、頭がいっぱいになってしまうことがあります。そのような時にはカウンセリングセンターにご相談ください。一緒に少しずつでも、苦しい状況を乗り切ることができたらと思っています。
令和2年7月25日907号

マイペースの安全感・人とつながる安心感

カウンセラー 関根 光絵

◎あつまれどうぶつの森
今年の3月に発売された、 任天堂のゲームソフト“あつまれどうぶつの森”が、世界的な人気を博しています。
 
ゲーム内容は、無人島に住むどうぶつたちと触れ合いながら、釣りや虫取り、果物狩り、自宅の増築や模様替えなどを自由気ままに行います。さらにオンライン機能を使って、現実のともだちともゲームの世界で遊ぶことができます。
 
人気の理由は、新型コロナウィルス感染症の猛威に怯える現実から逃避し、安全な世界に引きこもれることと、感染防止から直接会うことができない現実の友人と、ゲームを介してふれあえる部分にもあるようです。
 
◎オンラインでの関わり
現在、大学の講義はオンラインで開講されています。例年であれば、学生たちの声で賑わう大学構内も、今は静まり返っていてさみしく感じます。新入生の皆さんはもちろん、在学生の皆さんも、初めてのオンライン授業で戸惑う点が多くあるのではないでしょうか。加えて、オンライン授業では、大半の授業で毎回課題が出されるため、課題に追われて気持ちの余裕が持ち辛い状況だと思われます。
 
一方、通常の対面授業では、大人数の中に入るのが苦手だったり、人前で発表するのが緊張したりする人は、オンライン授業の方が受けやすいと感じているかもしれません。それはきっと自宅という自分の安全基地に居ながら、外の世界と関わっているため、マイペースで安全に進められるからだと考えられます。
 
◎人とのつながり
通常の対面授業では、学生間で、自然とサポートし合うような部分があります。例えば、自分だけ問題ができていないのではと思っても、他の人もできていないとわかって安心したり、孤独ではないと感じたりします。さらに、自分だけ問題が解けていたりすると、自信を持てたりします。そうした中から、自分の習熟度がわかるので、勉強のペースを調整することもできます。もちろんわからないところを教え合ったり、不安や愚痴を言い合ったりすることもあるでしょう。
 
オンライン授業でも、同じ授業を履修している友人が居れば、プライベートなやりとりの中でサポートを得て安心できます。しかし、特に新入生はこれから大学の友人を作る段階なので、様々な不安や孤独感と闘っているのではないかと案じています。
 
◎助けを求める力
内容に応じたところに助けを求めることは、大学生のうちに獲得できるといいスキルの一つです。 初めは勇気が要りますが、授業に関することは担当の先生や教学センターへ、不安やストレスとの付き合い方などについては、カウンセリングセンターに相談してください。 現在、カウンセリングセンターでは、電話に加え、Zoom等オンラインでの相談も行っています。
 
◎支え合って乗り越えよう
“あつまれどうぶつの森”でも、のんびりな時間の中にほっとする温かさを加えるのは、どうぶつや人とのふれあいです。 感染の恐怖から、他者に対して過剰に警戒しやすい昨今ですが、安全な形でふれあい、支え合ってこの感染症との闘いを乗り越えて行きたいですね。
令和2年5月25日903号

こころの健康を保つ工夫

カウンセラー 小田切 玲

◎こんな状態になっていませんか?
体調や経済的問題、将来について、とても心配になる。起こり得る最悪な事態を想像して、恐怖が強まり、落ち着きがなくなる。自由が制限されることで、怒りや不安を感じる。他人との交流が制限され、孤立や寂しさを感じる。オンライン授業になかなか慣れず、課題提出に追われ心身共に疲弊している。
 
今までとは違う環境の中では、様々なストレスを感じるのは自然な反応です。しかし、不眠(過眠)食欲低下や無気力・無力感、理由もなく泣きたくなるなど、「コロナうつ」状態に陥ってしまうと、抵抗力も弱まり、心身ともに不安定になってしまいます。

具体的な対処法

1.自分の状態を知る
不安やイライラを抱えているなど自分の状態を客観的に知ることは、今後の方針を立てる上でとても有効です。自分自身の感情を否定せず、ありのまま受け入れてみましょう。中には、他人からイライラなどをぶつけられ、傷付いている人もいるかもしれません。そんなときには「辛かったね、悲しいね」といたわるように自分に温かい気持ちを向けてください。
 
2.実際に「行動する」ことで意識を変える
自分の不安や怖さ、イライラを取り除くことは難しいことです。しかし、意識して行動すれば、感情に影響を与えることが出来ます。食事を作る、掃除をする、洗濯する、エレベーターを使わず、階段を使う。不安をあおるテレビ番組は、正確な情報を得たらそれ以上見ない。家族や身近な人に連絡をしてみる。今日、明日やることを書き出し、できたものは線を引いて消すなどもよいアイデアです。具体的に行動することが感情を変化させることにつながります。
 
3.生活サイクルを守る(←これが一番大事です!)
授業が始まりましたが、大学に通学せず自宅で授業を受けることは、通学の手間や時間がかからない反面、日常生活のサイクルを維持しなければ、オンラインであっても授業を受けることが難しくなります。一方で、自分自身で生活をコントロールしているという自覚が重要になり、自律的な生活を過ごすことは達成感にもつながります。
 
日常生活のサイクルを保つことは、うつ状態を軽減させるためにもとても大切なことです。朝は決めた時間に起き、寝る時間もなるべく守り、定期的に食事を取ります。長時間睡眠をとり続けると、睡眠の質を下げ、結果的に生活サイクルを壊すことになりかねません。また、食欲増進のためにも適度な運動が必要です。室内でのラジオ体操、最小限のスペースでできる縄跳びや、太陽を浴びるためにも短時間散歩をする方法もあります。身体を動かすこと、脳を動かすことのバランスがとれることで、よく眠れるようになるのです。
 
4.身近な人と連絡を取り合う
自分を孤立させないことも、こころの健康のためには欠かせません。実際に会うことが難しくても、電話やSNSなど、バーチャルなつながりを持つことはできます。どんな生活をしているのか、わかってもらえたり、安心したり、お互いが感じたり考えたりすることを共有すると、今まで感じなかった相手の一面を発見することもあります。人とコミュニケーションを取ることが難しい場合は、誰か相手を想定した上で独り言でもよいのです。「話す」ことは「(自分から)放す、離す」こととも言われます。それによって客観的な意識に気付いたり、ストレスを発散したりできるのです。
 
5.時間があるからできることに挑戦する
将来への不安を抱えているのは当然ですが、その状況に「ポジティブな一面を見つける」という発想の転換も心身の健康には役立ちます。通学時間が減り、外出が少なくなった時間を利用して、部屋の大掃除や、読破したいと思っていた本に挑戦したり、今までの日常を振り返り、自分を再認識する機会はなかなか持てません。語学などを学ぶことや、創作活動、もちろん自分の好きな娯楽にもたっぷり時間を使い、楽しい時間を過ごして、生きる力を蓄えてください。
 
以上のようなことを試しても、やはり自分ではうまくいかないと感じる時は、カウンセリングセンターに相談してみませんか。 ひとりで抱え込まず、今の状況を一緒に考え、乗り越えていきましょう。
令和2年4月10日901号

学生生活を支援します

このコラム「こころの風景」は、私たちの生活の中で起きる事を、4人のカウンセラーが交替で心理的側面から捉えお伝えしていきます。ぜひご一読ください。 初回はカウンセリングセンターの紹介です。
 
★カウンセリング
学生生活の中で直面する様々な問題について相談に応じています。あなたが困った時、「こんなことを人に相談してもいいのかな」「誰に話したらいいのかわからない」と思うことはありませんか。 カウンセリングは、あなたが考え、感じ、悩んでいることなどをカウンセラーが聴き、どうすればよいのか、どうしたいのかを一緒に考えていきます。どうぞひとりで抱え込まずに、話しに来て下さい。どんな所か見学だけでも歓迎します。 話された内容については固く秘密を守りますのでご安心ください。必要に応じて、医療機関や学内の部署も紹介できます。
 
★利用できる方
本学の在学生及びその支援者(家族・教職員・友人など。相談内容は学生に関することに限ります)。
 
★相談内容の例
人間関係(友達・家族他)/修学(履修・単位修得・休学など)/進路(就職・進路変更など)/自分自身(性格・特徴など)/学生生活全般(課外活動・アルバイトなど)/その他どんなことでも結構です。
 
★相談したいときには
次の方法で予約を。面接枠に空きがあれば、予約なしでも相談できます。
【メール予約】
件名「相談希望」、本文①学籍番号②氏名③希望日時(第3希望まで)を記入してください。
アドレス:counsel@asia-u.ac.jp(予約専用)
【電話予約】
0422-36-3285
来所での相談が困難な場合には電話相談もできます。
【来所予約】
ゆうちょ銀行ATM近くの白い建物
 
★受付時間
平日9時~16時30分
 
★スタッフ
臨床心理士・公認心理師の資格を有したカウンセラー(男性・女性)がいます。担当者のご希望があればお受けします。
 
★平成30年度の来談者数
学生・支援者2,007件
 
★相談以外の活動
【自己理解カード〔新入生・編入生対象〕】
自分の特徴や性格を知る手がかりとして活用して下さい(結果はmanabaか閲覧できます。日程は亜大ポータルで確認して下さい).
【心理テスト】
「性格検査」「職業興味検査」が受けられます。
【ワークショップ等】
自己理解やコミュニケーションをテーマに実施。詳細は、広報アジア・大学HPで。
【オープンすぺえす「ホッと‐場」】
疲れてひと休みしたいとき、息抜きをしたいときなどに、ゆっくり過ごすための場所です。
月~金曜日の9時30分~16時30分まで開放しています。[授業のない期間は10時30分~15時30分]
 
カウンセリングセンターは、学生の皆さんの成長・発達を支援します。詳しいことは、大学ホームページをご覧下さい。 充実した学生生活を過ごすためにカウンセリングセンターをご活用ください

令和元年度

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令和2年1月10日898号

ワン・チーム

カウンセラー 小田切 玲

昨年行われたワールドカップラグビーの優勝国、南アフリカ。初の黒人主将のコシリ主将は優勝後「僕たちの国には様々な問題がある。しかし、異なる人種やバックグラウンドの選手が一堂に会し、一つの目標に向かって一丸となり国のために戦った。何かを成し遂げたいと思ったら一つになれるんだということを見せたかった」と話しました
 
◎ネルソン・マンデラ
1994年南アフリカ初の全人種参加選挙を経て大統領に就任した故ネルソン・マンデラ氏は、大統領就任後、当時は「白人のスポーツ」として白人以外の人種から軽蔑されていた自国のラグビーチームを強く支持しました。ラグビーチームを全世界が注目するワールドカップで活躍させ、NO.1になることで南アフリカ全体の「変革」をアピールしたのです。この優勝は人種を超えて国民全体を感動させ、一つにしていく役割を担いました。
 
◎「魂の指揮官」
マンデラ氏は反アパルトヘイト運動に身を投じ、国家反逆罪で27年に及ぶ牢獄生活を経てアパルトヘイト撤廃に尽力した人物です。長い牢獄生活でも決して信念を投げ出すことはありませんでした。その時期、あるイギリス人の詩に心を寄せています。最後の二行は「私がわが運命の支配者」「私がわが魂の指揮官なのだ」とあります。どんな過酷な状況であっても、「自分の人生の主体は自分自身であること」を強く心に刻んだのでしょう。人は生きていく中で辛く、悲しく、くじけそうになる場面が幾度も訪れます。そんな時、マンデラ氏は自分を支えることばを唱え、自分を取り戻していました。そして、この詩をワールドカップ試合前に、当時のラグビーチームのピナール主将に贈った逸話は映画にもなった有名な話です。
 
◎良い面を見出す
マンデラ氏が異なる民族を一つにまとめるために、もうひとつしたことは「過去をゆるし忘れ未来へ向かおう」と訴えることでした。人種差別や迫害など長年不当な扱いを受けてきたことを水に流そうというのです。 彼はどのような人と接する時も「良い面を見出す」ことをしてきました。また「悪い人間であることを証明する出来事が起こらない限り、すべての人間は良い人間である」と信じていました。そして、自分も相手に対して誠実に行動することで、多くの場面で相手の信頼を得てきたのです。しかし、裏切られることもあったと言います。その時は「相手は自分の利益のために行動しただけで、裏切ろうと思ったわけではない。だから取るに足らないことだ」と解釈し、裏切られたことを問題にしていないようでした。「人の誠実さとは、誠実な人間にこそ引き出せるものである」というのが彼の信条であったのです。
 
◎ラグビー精神からの学び
「勇気とは、恐れを知らないことではない。抱いた恐れを克服していく意志を持つ。それが勇気なのだ。(マンデラ談)」 昨年、日本は南アフリカに勇気をもって挑み、敗れました。その後、私は南アフリカのラグビー精神に触れる中で「ワン・チーム」という日本チームと共通の精神に加え「ワン・カントリー」を勇気を持って成し遂げたマンデラ氏の生き方に辿り着きました。 昨年の感動に続き、今年やってくる東京オリンピックではどんな心の揺さぶりが待っているだろう、そんな想いを馳せる一年が始まります。
 
参考図書:『信念に生きる』リチャード・ステルゲン著
令和元年10月10日893号

問題解決とアフォーダンス

平澤 孝一

アフォーダンス(affordance)という言葉を聞いたことがありますか。
 
ダンスではありません。
アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンが提唱した生態学的知覚理論の中心概念で、環境が動物に対して与える「意味」のことを言います。「与える、提供する」という英語(afford)からの造語です。
 
◎環境が与える問題
環境が私たちに与え、年々深刻化している問題に、地球の温暖化がありますが、改善に向けた議論は、経済的な問題などが絡み、遅々として進みません。日本では、後処理を含めた原発事故による被害、台風や大雨などの自然災害が増大しつつあり、復興の過程においても人的、物的資源の不足など、問題は山積みです。
 
◎問題解決のあり方
私たちの身の回りに起こる問題の多くが単独では存在せず、複数の問題が複雑に絡み合っています。これに振り回されて、問題の本質を失した行動をとることもまれではありません。通常、問題解決には、自分がその問題をどう考え、どう対処、処理し、解決に導くかという自分を主体において臨むと思います。これでよいのですが、もし、この形で問題解決が困難な場合は、アフォーダンスの視点を取り入れて考えてみるとよいと思います。
 
◎アフォーダンスとは
アフォーダンスについて、ギブソンは「動物と物の間に存在する行為についての関係性」と述べています。 例えば、公園にあるベンチについて語る場合、「私はそのベンチに座るという行為が可能である」、この可能性が存在するという関係を「このベンチと私には座るというアフォーダンスが存在する」あるいは「このベンチが座るという行為をアフォードする」と表現します。つまり、アフォーダンスは行為の可能性そのものを指します。
 
◎大学のアフォード
現在の大学生活を一度アフォーダンスで捉えてみてください。ただ毎日を何となく過ごしていたり、目に見える問題はないけれど、何となく大学に足が向かず、授業に出席できなかったり、空虚なつまらない日々を送りながら「自分はいったい何やってんだろう。充実感を味わいたい。けれど、どうしたらよいか自分でもよくわからない」と思いながら過ごしている人もいるでしょう。
 
そんなとき、「大学は自分に何をアフォードしているのか」と捉えてみてはどうでしょう。色々出てくると思います。例えば、大学は「自分に卒業という資格を取ることをアフォードしている」、「自分に居場所をアフォードしている」、「自分の人間的な成長の機会をアフォードしている」というように、学生の皆さんと大学との間にはさまざまなアフォーダンスがあるのです。
 
◎逆転の発想
アフォーダンスという視点で物を見ることで、視野は一気に広がります。
「実感」がかすみやすい現代では、自分を中心に置くよりも環境が自分に何を与えているのかと、逆転の発想で自分を見てみるのも悪くはないと思います。
令和元年7月10日890号

失敗の先に見えるもの

関根 光絵

◎「はやぶさ」と「はやぶさ2」
今年の2月、日本の無人探査機「はやぶさ2」が小惑星りゅうぐうへの着陸に成功しました。2005年に初代「はやぶさ」が、小惑星イトカワに着陸し物質を持ち帰っていますが、それに続く世界的偉業です。小惑星など重力が小さい天体では機体の制御が難しく、高性能の探査機と精密な制御技術が必要とされます。この偉業の背景には、二機共に、準備段階での幾重の失敗がありました。そのたびに向き合い、原因と対策を追求して、その経験を正しく引き継いでいったことが、新たな困難を乗り越える対応力につながったそうです。皆さんは失敗に直面した際に、どのように向き合いますか。
 
◎ワイナーの原因帰属理論
成功や失敗の原因を考えるプロセスは、原因帰属と呼ばれています。社会心理学者のワイナーらは、“統制の所在”(原因を自分の中にあると考えるか、外にあると考えるか)と“安定性”(変わりやすいものか、変わりにくいものか)から原因帰属を4つに分類しています。それは、①能力、②努力、③課題の難しさ、④運です。4つのうち、失敗の原因を“能力”に帰属すると、落ち込みが大きく、意欲が最も低下するそうです。“課題の難しさ”や“運”に帰属すると、落ち込みませんが、意欲も湧きません。“努力”に帰属するのが、やや落ち込むものの、最も意欲が湧くそうです。ちなみに、成功の原因は、“能力”に帰属すると自信が育ち、意欲も高まるそうです。
 
◎失敗と向き合うこと
失敗に直面した際、その事実を受け止めるだけでも、ダメージは大きいでしょう。だから、失敗と向き合って、原因や対策を考えることは、辛すぎて目を背けたくなるものです。しかし、それは原因を“能力”に帰属し、意欲を低下させているからではないでしょうか。意欲を高めるためには、“能力”ではなく“努力”に帰属し、もう一度情報収集をし直して傾向と対策を練ったり、本番を想定したリハーサルをしたりして、準備と共に自信も整えることが有効でしょう。 加えて、より難しい事に挑戦する場合はなおのこと、準備と自信は、試行錯誤を繰り返しながら、徐々に万全の状態に整えて行くイメージをお勧めします。
 
◎失敗が導く新たな出会い
また、失敗を別の観点から見る方法もあります。自分が目標とするものにチャレンジし、成功を収めることを唯一絶対と考えるのではなく、失敗を自分に合う環境を探す一つのステップだと考えます。そう考えると、志望する会社の面接に落ちてしまったり、親密になりたい相手と進展しなかったりしても、“自分がより健康的に楽しく生きられる環境は他にある”というサインだと捉えることができます。そして、自分に合う環境を探す過程は、自分をより詳しく知る機会でもあり、その先にまだ知り得なかった新しい自分との出会いが待っているかもしれません。
平成31年4月25日886号

遊びは大事

谷川 寛樹

いよいよ新年度が始まりました。学業や運動や芸術など頑張りたいと思っている人もいるでしょう。
 
◎「遊び」のイメージ
「遊び」と聞いて皆さんはどんなイメージを持ちますか?小さい時に親から「遊んでないでちゃんと勉強しなさい」と言われていた人は、「遊びはいけないもの」というイメージが浮かぶかもしれません。もし「勉強しないで遊びなさい」と言われるとちょっと違和感を抱くのではないでしょうか。
 
スポーツにおいては、遊びに一切目もくれずひたすら練習に励んでいる姿を美徳と感じ、練習を休んで遊ぶことに不真面目さを覚える人もいるかもしれません。 私自身、ある学校の先生から「遊びは禁物」と言われ、勉強に専念することを強いられてきたことがあります。そのためか遊ぶことにどこか負い目を感じていたのを覚えています。また受験勉強しているときは「遊びは勉強の妨げになる」と思い込んでいた記憶があります。
 
では果たして「遊び」は良くないもので、勉強やスポーツの妨げになるものでしょうか?
 
◎人間の成長において不可欠な「遊び」
子どもを対象にしたアプローチで、遊戯療法という心理療法があります。プレイルームという空間で、「遊び」を通して自分の気持ちを表現して、本来の心を取り戻し、持っている力を発揮していくことを目指すものです。つまり「遊び」が子どもの自信を芽生えさせ、心の成長につながっていくのです。
 
また子どもは「遊び」を通してコミュニケーションの取り方やルールを学び、社会性を身につけていくといわれています。そういう意味で「遊び」は人間の成長にとって必要不可欠なもので、子どもにとってはとても重要なものなのです。このことは子どもに限らず、学生や大人になっても同じようなことがいえます。
 
◎「遊び」の意義
例えば車のブレーキにはペダルを踏んでもブレーキがかからない「遊び」というものがあります。「遊び」がなければ踏んだ瞬間にブレーキがかかり、乗っている人が激しく揺さぶられ非常に危険です。「遊び」があることでゆっくりと安全に止まることができるのです。このことから「遊び」は「余裕」と言い換えることができます。人間の気持ちに当てはめますと、「余裕」がないと焦りやいら立ちばかりが募り、物事が進まず行き詰ってしまい、他者への配慮などできようもありません。気持ちに「余裕」が生まれると、冷静な判断ができて、相手のことを思いやれるようになり、物事がスムーズに進みやすくなります。
 
「遊び」は心に「余裕」をもたらし、日常生活で生じるストレスを和らげ、程よい人間関係を作り上げるものだといえます。そう考えると「遊び」は勉強やスポーツを妨げるというよりも、むしろ効率を上げるために有効なものなのです。
 
「遊び」といっても多種多様でたくさんあります。その中から心に「余裕」をもたらすような自分に合った「遊び」を大学生活の中で見つけてほしいものです。
平成31年4月10日885号

学生生活をサポートします

このコラム「こころの風景」は、日常生活や対人関係の中で起こる出来事について、カウンセラーが心理的側面から捉え、交替で年5回執筆しますので、ぜひご一読ください。
初回はカウンセリングセンターを紹介します。
 
★カウンセリング?
学生生活の中で直面するさまざまな問題について相談に応じています。あなたが困ったとき、「こんなことを人に相談してもいいのかな」、「誰に話したらいいのかわからない」と思うことはありませんか。カウンセリングは、あなたが考えたり感じたり悩んだりしていることなどについて、カウンセラーが聴き、自分がどうすればよいのか、どうしたいのかを一緒に考えていきます。ひとりで抱え込まず、話しに来てください。
話された内容については固く秘密を守りますのでご安心ください。必要に応じて、医療機関や学内の部署も紹介できます。
 
★利用できる方
本学の在学生およびその支援者(父母・教職員・友人など。相談内容は学生に関することに限ります)
 
★相談内容の例
▽人間関係(友達・家族他)
▽修学(履修・単位修得・休学など)
▽進路(就職・進路変更など)
▽自分自身(性格・特徴など)
▽学生生活全般(課外活動・アルバイトなど)
▽その他、どのような内容でも結構です
 
★相談したいときは
次の方法で予約を。面接枠に空きがあれば、予約なしでも相談できます。
【メール予約】
件名「相談希望」、本文①学籍番号②氏名③希望日時(第3希望まで)を記入すること。
アドレス:counsel@asia-u.ac.jp(予約専用)
【電話予約】
TEL 0422-36-3285
【来所予約】
2号館西側白い建物(ゆうちょ銀行ATM近く)
 
★相談受付時間
【授業期間】
平日9時~16時30分
【夏季休暇中】
平日9時~15時30分
 
★スタッフ
カウンセラー(臨床心理士)専任・男女各1名/非常勤・男女各1名
 
★平成29年度利用件数
学生・支援者1436件
 
★相談以外の活動
▽自己理解カード(新入生・編入生対象)
自分の特徴や性格を知る手がかりとして活用してください。
(結果は4月24日以降manabaから閲覧できます)
 
▽心理テスト
「性格検査」「職業興味検査」が受けられます。
 
▽ワークショップなど
自己理解やコミュニケーションをテーマに実施。詳細は、広報アジア・大学ホームページで。
 
▽オープンすぺえす「ホッと‐場」
疲れてひと休みしたいとき、息抜きをしたいときなどにゆっくり過ごすための場所です。
月曜日から金曜日の9時30分から17時(夏季休暇中は16時まで)開放しています。
 
カウンセリングセンターは、学生の皆さんの人間的な成長・発達を支援します。
充実した学生生活を過ごすためにカウンセリングセンターを活用してください。
カウンセリングセンター
〈2023年7月20日更新〉
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