卒業を祝して

『卒業を祝して』

<広報アジア 平成21年3月10日号>

 ご卒業おめでとうございます。いよいよ新たな世界への旅立ちです。大学の卒業であると同時に、小学校以来いままでの教室での学習の終了です。学年という1年を単位として進行していく社会から、毎日が新たな出会いであり別れとなるかもしれない、そんな社会に進みます。毎日が変化の連続です。人や物は変わらないとしても、置かれている状況は日々変化しており、二度と同じではありません。一期一会、その刹那を一つ一つ大切にしてください。

 世界同時経済不況の中での旅立ちですが、経済全体、あるいは産業や企業が 逆境の時代だとしても、個々人については将来が期待できる絶好のチャンスでもあります。ただ、学業と違って、どのように努力しても将来が展望しにくい社会への突入です。だからこそ、それぞれの目標に向かって日々努力し、少しでも目標に近づくようにする以外にありません。しかし、努力は必ず報われます。先ず以て、自分自身で納得が出来る筈です。人が柳絮のように漂う世にあって、自分を確立することは非常に重要なことです。あるいは、予期せぬ方向に物事が展開していくことも多々あります。十分に実力を養っていてこそ機会が生まれ、機会を生かすことができます。

 世の中で、正しいものを見分けるのはかなり難しいことです。哲学者ウィトゲンシュタインがあげた例だったと記憶していますが、見事に私が間違った例を引き合いに出します。
地球の赤道上が平坦でそこにぴったり着くように帯が巻けたと想定する。その帯を1メートル長くしたら、理屈で言えば地表から僅かに隙間が出来るはずである。では、その隙間はどれぐらいかという設問である。私は地球の大きさや帯の長さからして、1メートルという無視できる長さを長くしただけでは、出来る隙間はほとんどゼロに等しいと考えた。答えは意外にも、直径などには全く関係なく、約16センチである。地球という大きさのまやかしに見事に騙されました。

 そもそも学業がそうですが、そのままの知識が役立つとは限りません。しかし、目前に現れる課題をどう整理し、分析すれば良いかなどは学んだ筈です。加えて、これからは、何をどう生かすかを学び、さらには、自分をどう生かし、どう生きるかを学んでください。いや、きっと学ばざるを得ないと思います。諸君、一回ぽっきりの人生です。自分を大切に生きてください。