『平成21年度亜細亜の夢』巻頭言
<平成21年4月>
皆さんは、それぞれ自分の将来の夢を見ながら亜細亜大学に入学されました。資格や職種、職場や企業、あるいは国内外での諸活動などについて、自分がそこに居て活躍している姿を想像していることでしょう。あるいは、全く違った将来の夢を見ているかも知れません。
私の若い頃からの夢はマルコポーロのように世界中を旅したいというものでした。キリスト文明、イスラム文明、そして中国文明という当時としては別世界の中に次々と身を置いて苦労と感動を重ね、旅を続けるというマルコポーロのような生き方をしてみたいと思っていました。それよりもさらに若い頃、カール・ブッセの「山のあなたの空遠く」やメーテルリンクの「青い鳥」に感じるものがありました。親の愛情は空気のように見えませんでしたが、不幸は感じませんでしたので、「幸せを求めて」ではなく、「何かを探しに」。その「何か」が山の向こうのそのまた遠くにあるのではないかと。そのわずかな片鱗でしょうか、いまだに地図を見るのが大好きで、妻から「また地図を見ている」などと言われています。残念ながら、その夢は未だに達成されていませんが、今でもそれは見果てぬ夢です。
以前翻訳した本の中で、ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンが自分を回顧しながら、ロバート・フロストの詩を引用していました。勝手に短くして紹介すると、
色づき始めた森の中で、道は二つに分かれていた。
残念だが、二つの道を進むことはできない。
一つの道を進んだ。
二つの道は同じようなものだったが、草の生い茂っていた道は
誰かが通るのを待っているように思えたから。
もう一つの道はまたの機会にしようと思った。
しかし、最初の道が先へ先へとつながっていることも知っており、
再び同じ道に戻ってくることはないだろうとも思った...。
そして、それが大きな違いとなった。
亜細亜大学には4つの学部と短大部があります。皆さんはすでに何れかの道を選択しました。しかし、この5 つの領域ですら社会の基本的な分野をカバーするのみで、実際の社会は連続的に実に様々な分野に広がっています。同様に、人々や家庭もそれぞれ異なり、実に多様です。ここは自分の居場所ではないと疑問を持ち、もがきながらも、どの人も一人ひとりが多様な広がりの中で自分を確立しています。確立しようとしています。ただ生きるだけではなく、自分に与えられた課題や使命を懸命に果たそうと努力しています。
亜細亜大学はその名の通り、アジア地域で活躍する人材を育成することを教育の使命としています。本年は、1941年の興亜専門学校創立から68年目、55年の亜細亜大学創立から54年目を迎えました。この間幾多の組織改編を重ねましたが、教育の使命は当初から一貫しています。亜細亜大学も何かを追い求めています。その何かとは、アジア地域で建設的に活躍し、アジア融合に新機軸を打ち出す人材を育成することです。アジアの人々が手を携えて共に豊かに生きる社会が到来することを夢見て。皆さんの先輩が組織する同窓会であるところの青々会が全国に65支部、そして海外にアジア地域を中心に9支部あります。亜細亜大学は建学以来現在まで、営々と諸君の先輩が活躍を続けることで、しかるべき社会的地位を獲得してきました。諸君、分かれ道をいたずらに振り返ることなく、道を前へ前へと進んでください。