面白くなければ学問じゃないロゴ23

若者と地域は
どうすれば
つながるのか

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#亜大の研究
岩垣 穂大 講師
社会学部 現代社会学科
2026.08.01
シリーズ企画「面白くなければ学問じゃない!」では、亜細亜大学の教員陣の研究内容やエピソードを紹介します。第23回の特集は、社会学部 現代社会学科 岩垣 穂大 講師 です。
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まちづくりを考える研究者としての原点は「東日本大震災」

私は鳥取県中部の倉吉市で生まれ育ちました。子どもの頃はスポーツに打ち込み、中学までは野球、高校ではラグビーに熱中しました。高校時代には県代表として全国大会に出場する機会にも恵まれました。大学進学を機に東京へ移りましたが、今でも故郷への思いは変わりません。研究活動を通じて鳥取県内でまちづくりに取り組む方々との交流を続けています。
一方で、自分の知らない土地を訪れることも好きでした。大学時代には東南アジアを中心にバックパッカーとして各地を巡り、多様な文化や人々の暮らしに触れました。こうした経験は、後に地域やコミュニティを研究する上での大切な土台になっています。
私が研究者を志す大きな転機となったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。当時、私は地域福祉学や公衆衛生学を学ぶ大学3年生で、就職活動を進めているところでした。しかし震災によって日本社会は大きく揺らぎ、企業の採用活動も延期されました。テレビや新聞を通じて伝わる被災地の惨状を目の当たりにし、いても立ってもいられなくなった私は復興支援ボランティアとして宮城県石巻市や女川町へ向かいました。
被災地ではテント生活をしながら、瓦礫の撤去や泥かきなどの活動に従事しました。約3カ月にわたるボランティア活動では、津波によって一瞬にして日常を失った地域の現実に直面しました。広大な被災地を前に無力感を覚えることもありましたが、その一方で、復興に向けて懸命に前を向く人々の姿に深く心を動かされました。この経験を通じて、「困難を抱える人々を支え、社会に貢献できる仕事がしたい」という思いが強まり、大学院への進学を決意しました。
大学院では社会医学を専門に学び、博士(人間科学)を取得しました。また、社会福祉士と精神保健福祉士の資格も取得し、研究と実践の双方から社会課題に向き合う基盤を築きました。

社会福祉のキャリアを生かし地域コミュニティの力を探る

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大学院修了後は、所沢市社会福祉協議会に勤務し、生活困窮者支援やこども食堂、地域包括支援センター事業などに携わりました。現場でさまざまな相談を受ける中で実感したのは、制度やサービスだけでは解決できない課題の存在でした。高齢者の孤立や子育て家庭の不安、生活困窮、地域のつながりの希薄化など、多くの問題は人と人との関係性と深く結びついています。
例えば、子育て広場やこども食堂など、子育て世代を支える制度やサービスは多くあります。しかし、すべての人が自分から積極的にそれらを活用できるわけではありません。初めてのコミュニティに参加する際はとても気を使いますし、そもそも制度やサービスの情報を知らないという場合もあります。その時に誰かに声をかけてもらえたら、一緒に行こうと誘ってもらえたら。そんな小さなことが、行動の変化のきっかけになります。地域コミュニティの中には、そのような気配り心配りがたくさん存在すると感じています。現場での経験を通じて、地域コミュニティそのものを豊かにすることが、福祉の基盤づくりには重要だと考えるようになりました。
そこで私は、社会福祉協議会での実務経験を生かしながら研究者の道へ進みました。現在の研究テーマとしては、地域コミュニティ、まちづくり、生活困窮者支援、こども食堂、社会的処方などを扱っています。
特に関心を持っているのが、地域社会における「ソーシャル・キャピタル」です。これは人と人との信頼関係やネットワーク、規範といった協調行動を活発にすることで、社会の効率性を高めることができるとする概念です。ソーシャル・キャピタルが豊かな地域では、人々が自然に助け合い、孤立や孤独を防ぎやすくなります。また、健康や幸福感の向上、地域経済の活性化にも良い影響を与えることが知られています。私はこうした視点から、超高齢社会や人口減少社会における持続可能な地域づくりのあり方を探究しています。

若者に選ばれる「地域」とは?

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現在、私が特に力を入れている研究テーマが「若者によるまちづくり」です。
人口減少が進む日本では、多くの地方自治体が移住促進に取り組んでいます。しかし、若者の東京圏への集中は依然として続いています。地方での暮らしに魅力を感じながらもなぜ移住に踏み切れないのか。なぜ地域に定着できない若者がいるのか。私はその背景にある社会的・文化的要因に着目しています。
近年、地方に残る固定的な性別役割意識や地域特有の人間関係が、若者にとって生きづらさにつながることが指摘されています。私の研究では、こうした地域コミュニティに存在する無意識の偏見や思い込みの実態を明らかにし、その改善に向けた実践的な取り組みを行っています。現在は、若者の地方生活における困難要因の解明を目的としたエスノグラフィと、「関係人口」の創出に向けたアクションリサーチを進めています。
関係人口とは、観光で訪れる人ではなく、その地域と多様に継続的に関わる人々を指します。私は、暮らし体験プログラムや起業体験プログラムなどを通じて、関係人口創出のため若い世代と地域をつなぐ新たな仕組みづくりに挑戦しています。
研究手法として重視しているのがアクションリサーチです。研究者自身が現場に入り、地域住民や自治体、企業、NPOなどと協働しながら課題解決に取り組み、その過程を分析して知見を蓄積していく方法です。研究室でデータを分析するだけでは見えてこない地域の実態や人々の思いを理解するためには、現場に足を運び、人々と対話することが欠かせません。だからこそ私は、研究者である前に一人の実践者として地域に関わり続けたいと考えています。

地域と共に学び未来を創る人を育てる

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研究活動と同じくらい大切にしているのが学生たちとの学びです。
亜細亜大学社会学部は、フィールドワークや課題解決型学習を重視し、多様な他者と協力しながら社会課題の解決に取り組む実践型人材の育成をめざしています。私自身も、学生が地域社会の現場に飛び込み、自ら考え、行動する機会を積極的に設けています。2025年には鳥取県大山町で「まちづくり」をテーマとしたゼミ合宿を実施しました。学生たちは有機農業や酪農の体験、地域住民との交流、子どもたちとの活動を通じて、地方で暮らす人々の日常や地域の魅力に直接触れました。教室で学ぶだけでは得られない気づきや発見が数多くあったと思います。
さらに2026年夏には、社会学部1〜2年生を対象に長野県安曇野市においてフィールドワークも予定しています。地域の特色ある資源を活用しながら、コミュニティの成り立ちについて学ぶ機会としたいと考えています。
学部での担当科目である「地域コミュニティ論」でも、地域の最先端で活躍する実践者をゲスト講師として招き、現場の課題に触れながら学ぶ機会を設けたいと思っています。
社会学は、地域づくりだけでなく、アニメやゲーム、食文化、SNS、消費行動など、人々の営み全般を研究対象とする学問です。私のゼミでも、まちづくりに加え、サブカルチャーやファンダムなど多様なテーマで卒業研究に取り組んでいます。しかし、どのテーマにも共通するのは、フィールド調査やインタビューを通して「人と社会を深く理解する」という視点です。
人口減少、少子高齢化、孤立・孤独、地域格差など、日本社会は多くの課題に直面しています。こうした課題に対し、地域福祉学や、社会医学の知見を融合しながら、実践的な解決策を探っていくことが私の研究者としての使命です。そして学生たちには、地域社会を「共に創る場」として捉えられる人になって欲しいと考えています。亜細亜大学から、地域の未来を切り拓く若者たちが数多く巣立っていくことを願いながら、日々学生たちと向き合っています。
#亜大の研究
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