戻る企業の国際化と国際人材

今日、代表的な日本企業の「海外売上高比率」を見てみると、パナソニック49%、ソニー72%、キヤノン81%、東芝58%、資生堂51%、日産80%となっている。また、上記企業の「海外従業員比率」を見てみると、パナソニック58%、ソニー63%、キヤノン64%、東芝44%、資生堂48%、日産54%となっている(出所:各社アニュアル・レポート, 2014年)。このことから、もはや日本企業といえども、売上高は海外の消費者に、生産についても海外の労働者に、極めて大きく依存していることがわかる。他方、私たち日本の消費者もまた、意外と多くの海外企業の製品を使っている。すなわち、企業の経営活動と競争は、まさに「ボーダーレス」に行われているのである。
 
ところで、大学は企業就職のための人材養成所ではないが、大半の学生は、将来企業に就職し、大学時代に養った能力を企業組織の一員として発揮し、活躍してゆく。では、このボーダーレスな国際ビジネス環境おいて、学生はどのような能力を大学時代に養ったらいいのであろうか。
 
つい先日、調査のため中国・上海に子会社を置く、有名な日本企業を訪問した。その社長さん曰く、国際ビジネスには様々な難しさがあるが、最も大事なものを一つ挙げるとすれば、それは「心」とのことであった。中国語が話せることや中国が好きというだけではうまくいかないそうだ。実は、これと同様のことを、他の企業でもたびたび聞いたことがある。
 
私たち教員が学生に、国際ビジネスにおいてもっとも重要なのは「心」だと言っても、いまいち説得力がない。しかし、「心」というのは、言い換えれば、互いの「信頼」だと私は解釈している。ただ、信頼とは難しいもので、他者への思いやりや敬意とともに、頼られるにたり得る自身の能力(これを能力と呼ぶかわからない。気概とか誠実さとかも含まれてくるであろう。)の双方向がなければならない。まさに、自助なくして協力なしといったところであろう。
 
では、翻って、学生が国際ビジネスに向けて、大学時代に身につけるべきものは何かと考えてみると、英語は相手に伝える手段であって心ではないし、豊富な海外知識もまたそれ自体では心になり得ない。どちらも重要な要素であることは疑いようもないが、実は、日本人であっても外国人であっても変わらずに相対せる豊かな人間性こそが重要なのではないだろうか。そしてそれは、多様な人々と顔を合わせて取るリアルなコミュニケーションの中で「暗黙知」として養われていくように思うのである。

荒井 将志(国際関係学部 国際関係学科 専任講師

〈2015年9月9日更新〉