戻る考えながら学ぶインドネシア語教育の取り組み

グローバル社会で活躍できる人材をめざすには外国語の習得は前提となる。しかし、日本の外国語教育では「文法を覚える」「単語を暗記する」ことが中心である。確かに外国語の習得に文法や単語の学習は必須であるが、「覚える」「暗記する」といった勉強法に辟易して外国語学習に挫折してしまうという人も多いはずだ。私は多文化コミュニケーション学科で第二外国語としてのインドネシア語を教えているが、授業では学生が主体的に考えながらインドネシア語を学べるようにと、初級と中級の授業では以下のような取り組みを実践している。
 
取り組み① 初級の授業は教科書を使っての基本文法の習得が主であるが、4回に1回くらいの頻度で作文・会話・書き取りを一つにまとめた練習を行っている。まず15分程度時間を与えて、習った範囲の文法を必ず盛り込んで簡単なインドネシア語の疑問文を5つほど学生につくらせる。そのあと、ランダムに学生(Aとする)を指名して疑問文の1つを言わせ、別の学生(B)を指名してその疑問文にインドネシア語で答えさせる。その間、A・B以外の学生はAの疑問文とBの回答文の書き取りを行う。次に学生Bに自らつくった疑問文を言わせ、また別の学生Cを指名して疑問文に答えさせる。こうして順繰りに学生をあてながら自分たちで作文した文章で会話練習を行わせ、書き取りを通じてスペルも覚えさせる。常に集中して聞き取りや書き取りを行い、その場で考えてインドネシア語で答えることが求められるため、初級の授業としては少々ハードであるが、対話を通じたゲーム感覚で文法や語彙を習得し、さらには会話に慣れることもできる。
 
取り組み② 中級の授業ではインドネシア人留学生2人にティーチング・アシスタントとして参加してもらっている。日本人学生は全員、各自の好むテーマでインドネシア語のエッセイ(A4用紙1枚程度)を書き、全員に配布する。1人1人のエッセイを1文ずつ丁寧に読み合って、文章をどのように直せば書いた本人の意図を適切なインドネシア語で表現できるのかを議論する。その議論にインドネシア人学生も参加して、インドネシア人学生と日本人学生とが一緒になって適切なインドネシア語表現を提案し、議論するのである。インドネシア人学生にとっては日本語の勉強になり、日本人学生は自分たちが日本語で考えた表現がいかに稚拙であるかを知り、日本語での簡単な言い回しが逆にインドネシア語では非常に複雑になることもあること、またネイティブが提案するインドネシア語表現は決して一つではなく様々に言い換えられることなどを、和気あいあいとしたディスカッションを通じて理解することができる。
 
自分の頭で考えた言葉は記憶に残り、定着する。言葉に悩み、言葉と戯れ、言葉と格闘する中で、外国語の学びは初めて本当のものになっていく。できる限り、それを授業の中で実践したいと日々、考えている。

増原 綾子(国際関係学部多文化コミュニケーション学科 准教授)

〈2016年3月30日更新〉