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「ジビエ振興」で
農業を守り、
地域を元気にする

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#亜大の研究
伊藤 匡美 教授
経営学部 経営学科
2026.02.01
シリーズ企画「面白くなければ学問じゃない!」では、亜細亜大学の教員陣の研究内容やエピソードを紹介します。第21回の特集は、経営学部 経営学科 伊藤 匡美 教授です。
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「町」と「店」の関係をマーケティング・流通の視点から考察

私の研究分野はマーケティング・流通です。その中でも特に「地域活性化」「まちづくり」の分野に力を注いだ研究活動を展開しています。
子どもの頃、私はテレビCMを見るのが大好きで、お菓子などの新製品情報に目を輝かせていました。また身近に商店街がある環境で育ったこともあり、商品を売るための仕組みや商店の努力に興味が芽生え、大学進学の際は「マーケティングが学べる」という理由で経営学部を選びました。大学生になって感じたのは、高校までの時間割にしばられた「勉強」ではなく、自分の関心を満足させるための「学問」ができるということでした。座学だけではない学びも多く、そのおもしろさに夢中になり、できるだけその学びを続けたいと考えて大学院へも進学。大学院の先生方は自由で個性豊かな方が多く、「おもしろい先生だな~」と思っていた教授が実はその研究分野では第一人者だったりして。そうした先生方の型にはまらない人柄にも影響を受け、博士課程まで大学院で学び続け研究者の道に進むことになりました。
大学院では主に中小規模の小売業と地域振興について「町」と「店」の関係をテーマに研究を進めました。私の院生時代には各地で大規模な店舗の進出が進み、昔ながらの商店街と地域が衰退していきました。商店街とともに成長してきた私としてはこの状況を見過ごすことはできません。なんとか地域に活気と元気を取り戻してもらうために、時には自治体や商店の方々と一緒に、主に「食」によるまちづくりと地域活性化について考えてきました。

自分の足で歩き、目と耳で確かめることが研究者としてのモットー

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研究者としての私は、可能な限り自分自身で全国各地のフィールドを訪れるようにしています。学術研究ですから専門分野の本や論文に目を通すことも大切なのですが、それ以上に地域の課題や問題点、そしてもちろんそれぞれの地域の魅力を自分の足で歩いて、直接目と耳で確かめることが重要だと考えています。なによりさまざまな町とそこで生きる&商売する人々との出会いは最高に楽しい! 食べることも好きなので各地域の魅力的な食材や料理も研究に向かうモチベーションとなっています。
10年ほど前から私が特に力を入れて関わっているのが「ジビエの振興による地域活性化」です。ご存じの方も多いと思いますが「ジビエ」とはフランス語で狩猟によって捕獲された野生鳥獣(イノシシやシカ、ウサギ、カモ、キジ、ハト、ウズラなど)の肉のこと。フランスをはじめヨーロッパ各地では古くから貴族階級を中心にジビエ料理の食文化が育まれてきました。実は獣肉食が禁じられていた江戸時代の日本でも山間部などでは人々は密かにイノシシやシカなどのジビエを楽しんでいました。現代でもイノシシ肉を「ぼたん」、シカ肉を「もみじ」と呼ぶのは、当時使われていた隠語のなごりだと考えられています。
そして近年、日本でジビエ料理を楽しめるお店が急激に増加しています。その背景にあるのは増えすぎた野生鳥獣による農作物被害です。
昨今ツキノワグマやヒグマなどによる殺傷事故が社会問題化していますが、実はそれよりずっと以前から増えすぎたシカやイノシシなどが田畑を荒らしたり、ヒノキの表皮や高山植物などの食害被害が深刻化していました。農林水産省の調査によると令和5年度の野生鳥獣による農産物総被害額はなんと約164億円にのぼったといいます。ただでさえ農業従事者の減少や高齢化が問題となっていますので、こうした被害は農村とわが国の農業に大きなダメージを与えています。そこで現在、政府は「捕獲(生息数を減らす)」「防護柵(農地を守る)」「環境整備(人里に来ないようにする)」の3本柱からなる農作物被害対策を推進しています。

地域社会における「ジビエ振興」の現在とこれから

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現在、日本には約700種類の野生鳥獣が生息しており、そのうち狩猟の対象となるのは約50種類。ハンターが狩猟を許可されている期間は北海道を除く地域では原則11月15日〜翌年2月15日までと法律で定められています。猟銃や罠による「捕獲」は生息数を減らす目的のために鳥獣の命を奪うことになりますが、その命をジビエとして有効活用する「ジビエ振興」が全国各地で進んでいます。高タンパク・低脂肪で鉄分が豊富といった栄養面はジビエ料理の大きな魅力。その山の恵みを地域資源として生かし、山村を経済的に支えていく一つの柱にしていこうというのが「ジビエ振興」の主旨です。
今後の課題としてはやはりハンターの減少と高齢化でしょう。またせっかく捕獲してもジビエ利用のためには法律に基づいた食肉処理が必要となります。そうした施設とそこで働く人員の確保も必要となってきます。実際、令和6年度に捕獲されたシカ、イノシシのうち、食肉処理施設で処理された割合は1割程度に過ぎません。それでも平成28年度の1,283トンから8年間で2倍以上の2,678トンに増加しました。政府は令和11年度のジビエ利用量目標を4,000トンとしています。そのためにもジビエ振興に関わる人を集めて、育てる必要があり、それぞれの地域を取り巻く環境や事情などを踏まえた解決策が求められています。私も現地の自治体や住民の方々の声を聞きながら、コミュニティビジネスとしてのジビエ振興についてさまざまなアドバイスを行ってきました。今後もどのようにジビエ振興が地域に根付いていくかを現地に足を運びながらしっかりキャッチアップしていきたいと思っています。

ゼミの学生にも実際に町を歩いて、人々の声に耳を傾けてもらう

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私自身がフィールドワークを大切にしていることから、ゼミの学生たちにも実際に町や商店街に足を運んで研究テーマを見つけてもらうようにしています。
山村のジビエ振興を研究テーマにしている学生はまだいませんが、私が台東区の産業振興推進会議のメンバーや産業フェア実行委員会委員長を務めたこともあって、近年、若い世代やインバウンドから注目を浴びている蔵前や谷中といった台東区内の地域振興・活性化について研究してもらっています。現場での見聞や地元の方々とのコミュニケーションを通して、学生たちは社会やビジネスに対する視野を広げています。
大学は高校までのような教科書に書かれていることをひたすら「勉強」する場所ではなく、体験やディスカッション、意見交換を通して、社会性と広い視野、そして多くの方とコミュニケーションできる力を身につけられる場所。学科やゼミの仲間、あるいは研究のために訪れたフィールドで自分よりずっと年上の人たちと一緒に遊んだり、お酒を飲んだり(もちろん20歳以上)することも大学生として必要な「学び」です。経営学は「社会科学」と言われていますが、「社会」を構成する「人」を知ることなしにマーケティングや流通をほんとうに理解することはできないと思います。
ゼミの学生たちの進路は幅広く、公務員や流通・マーケティング関係で地域振興に関わる仕事に従事している卒業生もいます。また、学生時代に起業して日本を飛び出してベトナムで日本料理店を営んでいる学生もいたりします。私のゼミで過ごした経験が少しでも彼らのモチベーションや活力となっているのなら、教員としてこれほどうれしいことはありません。
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