令和6年度『亜細亜大学ティーチングアワード』受賞者インタビュー:一山稔之教授
経済学科
2025.06.25

令和6年度『亜細亜大学ティーチングアワード』受賞者インタビュー:一山稔之教授

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令和5年度からスタートした、全学部生による投票結果をもとに、優れた授業を実施している教員を表彰する『亜細亜大学ティーチングアワード』(選考方法など詳細はこちら)。

受賞者となった3人の教員のうち、経済学部 経済学科の一山稔之教授のインタビューをお届けします。

一山 稔之教授 プロフィール
経済学部 経済学科
専門分野:微分幾何学、数学教育、応用統計学
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とことん考え抜く姿勢が 未来を切り拓く鍵になる

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まじめに取り組む学生に、真摯に向き合う
200人が座れる教室は、授業開始を告げるチャイムが鳴る前にほぼ満席となりました。授業が始まると、一山先生はmanabaから配信した問題を考えている時間を使って、学生一人ひとりにまず提出用の答案用紙を手渡しします。その後、広い教室を何度も歩いてまわりながら、解き方をアドバイスし、学生からの質問にも丁寧に答えていきます。

「私が学生に伝えたいのは『間違っていい』ということ。試験でも正答を導き出す必要はありません。短い試験時間で、式を考え計算もして答えを出そうとすると“パターン認識”で覚えてしまいかねません。正答を書くことよりも、答えを導き出す過程が大事です」

パターン認識とは、理論やメカニズムを理解せずに「こういう問題だから、こう答える」と丸暗記で機械的に覚えてしまうことの比喩です。一山先生は自身の研究分野である「微分幾何学的手法に基づく変分法」について取り上げながら、「研究者でも、(∞次元を含む)高次元の新しい特徴を持った空間(多様体)を表そうとしたら、数式だけではなく言葉や絵、図を用います。小テストや試験で数式がうまく書けない場合でも、学生が自分の考え方を文章で表現してくれれば、その内容で採点します」と方針を述べました。

さらに一山先生は数学教育について「学生は過去にふれあってきた“数学”で、ずっと痛めつけられてきたのでは?」と疑問を投げかけます。
「そもそもバツの付け方がおかしい。3/6が1/2に約分されていなかったら『答えが違う』とバツを付けられる。数学は本来『このように計算をすれば答えがわかる』という考え方ができれば十分で、約分も小数点にも直す必要もなく、究極をいえば正答も求める必要すらないのです」
解答の正誤よりも、式や考え方を理解し、正しい推論ができているのかを重視するのが一山先生のスタイル。毎週2000枚以上の答案の採点に加えて、最も少ない学期でも1000人を超える受講生がmanabaを使って解答する記述式解答に目を通し、考え方の一つひとつに丁寧に目を通しているため、授業が続く平日の睡眠時間は2~3時間になることもあります。     
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日常に潜む“数学”を発見していく
数学は「実生活では使えないと誤解されていますが、とても身近に存在しています」と一山先生は語ります。
「円周率π=3.14と習いましたよね。でもπ=3.14は、本当は近似値です。πは3. 14159265……と無限に続きます。仮に3.14の計算でタイヤを造ったら、スムーズには走行できません。メーカーは小数点以下も用いて滑らかなタイヤを設計します。ただ、小数点以下も何桁まで使うのかはごく限られた担当者しか知らないトップシークレットとか……」

一山先生は、人が美しいと感じる“黄金比”についてもこんな話をしてくれました。
「皆さんが必ず持っている学生証やキャッシュカードにも、黄金比が使われています。黄金比は1:1.618…の比率のことで、計算式で表すと(1+√5)÷2です。ピラミッドやパルテノン神殿でも使われているため、太古の人は詳しい数学を知らなくても、計算機やネット検索技術を持っていなくても、この対比を導き出せたことになります」
一山先生が、身近でユニークな例を出すのは「古代人のように、自らの手で数学を発見する過程を学生にも疑似体験してほしい」という狙いがあってのこと。

また一山先生は授業冒頭の5分を大切にし、この時間に学生の興味を引ける課題を出すように工夫しています。冒頭の課題でどれくらい授業に引き込めるかによって、学生の集中力が変わるという考えからです。
ある日の統計学入門では、確率から物事を捉えてもらうプランとして、「あなたは運命の出会いを信じますか」という問いが出されました。これは「誕生日が一致する確率を求める」という確率の問題を解くものです。1年を365日として2人の人間で考えれば、1/365となり一致する確率は約0.27%。でも30人の中で2人以上の誕生日が一致する確率を計算すると約70.6%に変わります。
「この確率等も参考に『あなたは誕生日が一致した人は、運命の人だ』と思いますか?自分の考えを書いて、提出してください。ちなみに、述べるのは『自分の考え』なので、正解も不正解もありません」
一山先生のそんな呼びかけに、教室では学生同士が楽しそうに意見を交わしあう姿が見られました。
「もちろん面白い話題ばかりではなく、データサイエンス時代でも必須となる微分積分でモデル化する授業も行います。冒頭はあくまで“つかみ”。授業後半の少し難解な数学や統計解析にも集中して取り組んでほしいからです」      
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突飛な考えも新しい理論の萌芽となる
一山先生の授業には、ユニークで厳格なルールがあります。その一つが、「1分遅刻すると1分の欠席としてカウントする」というものです。
「遅刻の合計が105分に蓄積したら、1回欠席になります。私は大学卒業後、企業でエンジニアとして働いていました。営利企業では、成果が出なければ意味がありません。何年も時間をかけて、一生懸命開発した“すごい性能を持っていても売れない商品を作った人”と、適当に作った“商品がたまたま大ヒットした人”がいたら、会社でも社会でも評価をされるのは後者。でも一生懸命で真面目な人が評価されない世の中には疑問を感じています。だから、せめて自分の授業の中くらい、真摯に頑張る人を評価したいと思ったのが始まりでした」

また一山先生は、学生が受けてきた数学教育の問題点を指摘し「数学の研究者だって答えを間違えるのは、日常茶飯事だから」と前置きしてこう語りました。
「答えを出すことよりも、アイデアや概念が新しい理論を作る萌芽になるかもしれない。本当に数学が苦手な学生は、ハチャメチャな考え方を提出してきますが『これは新しい発見のきっかけになるかもしれない』と、採点の手を止めてしまうこともごくたまにあります(笑)」
一山先生は「少し考えて、分からなかったらすぐに答えを教えてもらうのではなく、常に考える癖を習慣づけるようにすべき」と語ります。
「社会に出ると必ず『答えの与えられない問題』が立ちはだかるでしょう。その時、果敢に立ち向かえる強靭な精神と地頭を、今のうちに鍛えてほしい。とことん考え抜く訓練をすると、論理的な思考力が着実に身につきます。どんな些細なことでも納得できなかったり、理解できなかったり、それから疑問に思ったことがあれば、まず考えてみること。これだけでも思考の訓練になります。そのためとその週の全授業のサポート(補習)を行うための教室を、教学センターにお願いして用意してもらっています」

一山先生の授業は、数学の本質に触れ、思考を深める訓練の場でもあります。授業を通じて身についた思考力は、学生が未来を切り拓く力となるでしょう。      

<2025年06月25日 11時30分>
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